仙台高等裁判所 事件番号不詳〔1〕 判決
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
控訴人は「原判決を取消す、被控訴人の請求を棄却する、訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は控訴棄却の判決を求めた。
当事者双方の事実上の主張は、被控訴人において
一、本件係争の二十七番、二十番、二十六番の二、十九番の三の各地上の建物は現在末尾添付目録記載(甲第五号証)のとおり登記簿上の表示が更正されているのである。
二、甲第六号証(委任状)は偽造の委任状である。なお斑目万四郎名下の印影は同人が紛失した印章を何人かが冒用して顕出したものである。
三、控訴人主張にかかる取得時効完成の点は否認する。
と述べ、控訴人において
一、本件係争建物は現在末尾添付目録記載のとおり登記簿上の表示が更正されていること、本件建物は控訴人が斑目万四郎から買受けるまでは万四郎の所有であつたことは争わないが、右買受けた日時並びにその代金は権利証を紛失したため記憶していない。なほ甲第六号証は真正に成立したものである。
二、仮りに控訴人の従来の主張が理由ないとしても、控訴人において本件係争建物を昭和八年三月十四日以来所有の意思をもつて平穏公然に占有してきたのであるが、その占有の始め善意にして且過失がなかつたから、十年の取得時効が完成して本件係争建物は控訴人の所有に帰したのである。
と述べたほか、原判決事実摘示と同一であるから、ここにこれを引用する。(立証省略)
理由
末尾添付目録記載の本件係争建物(更正前の表示は原判決添付目録記載のとおり)は本件当事者双方の父(被控訴人は長男、控訴人は三男)に当る訴外斑目万四郎の所有であつたが、これにつき昭和八年三月十四日万四郎の三男である控訴人のため売買を原因とする所有権取得登記がされたことは当事者間に争がなく、成立に争のない甲第一号証の一、二によると右所有権移転登記は昭和八年三月十日の売買を原因としてされたことが認められる。よつてまず、右万四郎から控訴人えの所有権移転登記が万四郎の意思に基いてされたものかどうかの点につき考察するに、成立に争のない甲第一号証の一、二、第二号証、第三号証の一、第四号証、原審証人斑目万四郎(第一、二回)、瀬和義男の各証言、当審における被控訴人本人尋問の結果及び本件弁論の全趣旨を綜合すると、万四郎はその所有に係る本件建物につき、いまだかつて控訴人との間の売買、贈与その他によりその所有権を控訴人に移転することを約したことがなく、右所有権移転登記申請も控訴人が万四郎に無断で同人の印顆を勝手に押した委任状(甲第六号証)によつてこれをしたものであつて、万四郎は右建物に対する租税の納付告知が昭和二十三年度分まで同人宛に来ており、同人において引続き納税して来た次第で右所有権移転登記のせられていることを知らないままに経過したものであることを認めるに十分である。控訴人は父万四郎から本件建物の所有権を譲受け、右登記も同人の意思によつてせられたものであると主張するけれども当審における控訴人本人の供述中右主張にそう部分は前掲各証拠に照し、たやすく信用し難く、その他控訴人提出援用の全証拠をもつてするも未だもつて上記の認定を妨げるに足りない。
従つて前示所有権移転登記は法律上無効のものといわなければならない。
次に控訴人は取得時効の抗弁を主張するけれども、前段認定の事実関係に徴すれば仮りに控訴人において昭和八年三月十四日以来本件建物を占有していた事実があつたとしてもその占有の初め善意無過失であつたということができないから控訴人の右抗弁は排斥を免れない。而して訴外斑目万四郎の長男である被控訴人が同訴外人の隠居により昭和二十一年五月一日家督相続をしたことは成立に争のない甲第二号証により明白であるから、本件建物は右相続により被控訴人の所有に帰したものというべきである。
被控訴人の本件請求を正当として認容した原判決は相当で、本件控訴は理由がないから民事訴訟法第三百八十四条第九十五条第八十九条を適用し主文のとおり判決する。(昭和二六年八月一〇日仙台高等裁判所民事部)
(別紙目録は省略する。)